

















































アニメーション映画「ヤマトよ永遠に(1980)」は 途中でスクリーン比が変更になる映画ですが、DVDを確認したところ、スクリーンが広がる前は周囲を黒で
覆っていることがわかりました。もし万が一、原田氏の健康が大きく崩れた場合、
「同じ要領で、3面マルチ部分以外は、周囲を黒で覆った形ならば(右図参照)、インターネット配信やDVDを考えてもよいかもしれない」と原田氏は述べています。
「「地下幻燈劇画少女椿」は、もともと3面マルチスクリーン+実験演劇作品として作ったのに、近年、非公式にインターネットにアップロードされた映像だけを見て
作品を評価されるのが残念。霧生館の作品は劇場の暗黒(暗闇)の中で観てほしい」と述べています。
かつて霧生館作品は、日本から BETACAMテープを航空便で送る形で海外で上映してきました。しかし現在はデジタル上映になり、
インターネット経由で上映マスターを要求されるようになりました。霧生館や きゆばる はアナログ的な方法しかしらないので現在は対応できていません。
今後はデジタルやインターネット技術に長けたサポーターの援助が必要なのかもしれません。(2021/2/5)

拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
●現在は背景の作画作業が行なわれています。絵の具を乾燥させながら交互に描くため、背景作業は常に15〜20カットぐらいずつ行なわれます。
以下原田監督談…「まず最初に下地を塗り、少しずつ上から細かい部分をポスターカラーで塗り重ねていきます。
どんな些細な風景も必ず資料に目を通しながら描きます。
完全な心象風景でなく客観的な描写の場合、すべて想像で描いてしまうと思わぬ見落としをしてしまう場合があるからです。
また いつも実践しているのは、デジタルで撮影する場合、フィルム撮影の時のように、必ず「空間・空気の粒子」を取り入れる事。
背景美術は「濁った色」で描く事(「濁った色」は商業アニメでは忌避されています)。そして人間が生で描いたという「生々しい痕跡」を入れる事。
ポスターカラーはよくカビが生えるのですが、そのカビも絵の具と一緒に画用紙に塗り込んでいます。
「ホライズンブルー」も「日本の昔ばなし」も複数の商業アニメの業界の方から「色が汚い」と指摘されたのですが、
第二次世界大戦前からの他国への侵略、敗戦後も 公害・弾圧・差別・暴力、現在も様々な虐め・ハラスメント…。
果たして日本はそんなに美しいのかという思いが常にあります。日本への怒りや悔しさが座敷牢制作の原動力となっています」(2021/1/4)
拡大可
●霧生館作品は「商業広告の無い、真暗闇(暗黒)」の中での投影が原則となっています。
そのため特にGoogleなどグローバル大企業と対立している原田氏の存命中はフルバージョンのオンライン配信やDVD化等は ありませんが、
国を問わず「非商業の暗闇」の中で上映できる環境もしくは実験的な提案があれば対応していきたいと考えています。
霧生館は西暦前(BCE)の古代壁画から続く古典映画を継ぐ弁証法と唯物論に基づいて今後も考案と思考を続けていきます。
同時に観客の皆さんの能動的発案を歓迎致します。
霧生館が かつて行なっていた上映前の「暗黒迷路の通行」に代わり現在実践している「都市の観念迷路化」は、実は霧生館でなく、
ある美術評論家の方が提案した方法なのです。
多数となっている従来の方法に従うのではなく、あらゆる点に疑問符を付け 個人個人が絶えず思考し続ける事は最終的には
現在の社会・政治・Neoliberalism経済等は果たして現在のままでよいのかという、生身の人間による民主社会の山頂へと繋がっています。(2020/12/20)
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
拡大可
●作画中です。ラストの決めの炎上シーンが上手く仕上がらず、明日もう一回やり直すとのこと。(2020/10/11)
●追加 200枚の炎の作画作業が行なわれています。(2020/10/10)

●全2000カット中、1005カットが完成。(2020/10/9)
![]()
●全2000カット中、1000カットが完成。(2020/10/8)
3面マルチスクリーン部分が大幅に増えたため、総カット数が 1900カットから 2000カットに変更になりました。
「極彩色肉筆絵巻 座敷牢」着色風景を公開しました。
拡大可
※毎回同じように見えますが、全部「違う炎」です。炎の動画だけで 500枚ほどあります。
●全1900カット中、980カットが完成。(2020/10/5)
一番右が過去28年間に作画した紙の総量の1/2。その左隣は、過去20年間に作画した抽象アニメーションのロール。※PCの場合、2回クリックで大きくなります。


※拡大可
※拡大可
●全1800カット中、770カットが完成。(2020/8/21)
「和漢三才図会(1712年発行)」は江戸時代に30年かけて編纂された百科事典。撮影には1906年(明治39年)に再販された物が使用されています。

●全1800カット中、735カットが完成。(2020/8/16)
※この他は刺激的な映像になりますのでアップロードを控えさせていただきます。
●全1800カット中、716カットが完成。サブ・スクリーンの映像です。8mmフィルムで撮影。※拡大可(2020/8/14)

●全1800カット中、673カットが完成。↓1990年代に8mmフィルムで撮影された群馬県桐生の夜祭「えびす講」の様子です。※拡大可(2020/8/9)

●全1800カット中、670カットが完成。※拡大可(2020/8/8)

●全1800カット中、660カットが完成。 ※写真拡大可。2回目のクリックで大きくなります。(2020/8/6)

●全1800カット中、603カットが完成。(2020/7/25)
1カット、彩色が終了して撮影の直前、赤い絵の具が原稿の上全面に こぼれてしまい 修整作業に追われていたそうです。
※中央の写真は、赤い絵の具がこぼれた後、すぐに雑巾でふき取ったところ との事。※拡大可

●全1800カット中、601カットが完成。↓8mmフィルムで撮影されています。※拡大可(2020/7/24)


●全1800カット中、553カットが完成。(2020/7/17)

●全1800カット中、523カットが完成。(2020/7/13)
















(←拡大可)


●完成した「極彩色肉筆絵巻 座敷牢」のBGM「謎の暗黒曲馬団」を YouTubeにUPしました。
右側の写真は録音中の風景(拡大可)。曲の基礎部分(ドラムやピアノなど)の音楽ソフトへの音符打ち込みを終えた後、
楽器とミキサー、パソコンを接続コードで繋いでの録音。当初半日で終わらせる筈が、パソコントラブル等で、結局、ミックスダウン(曲の各パートを最終調整して完成
音源を音楽ファイルとして書き出す作業)まで1日半かかってしまったそうです。
(2020/3/29)
●全1700カット中、176カットが完成。やっと10分の1が完成しました。(一部画像にモザイクを入れております)人物の着色には油性マジックやデザインマーカー、
ポスターカラー、水彩絵の具の他「水性カラーペン」が使用されています。水性ペンはインクがかすれてきたらキャップを取って水を入れると、
なめらかな描き味になるそうです。(2020/3/27)
●全1700カット中、168カットが完成。この日は野外で「集団暴行時の足音」「森の環境音」「池の水の音」「岩に激突する音」などの効果音が録音されました。
またBGM 1曲の打ち込み部分(10トラック)の作業が完了しました。
→一番右の写真(拡大できます)は、蝋燭の炎の部分に懐中電灯を当てながら撮影されています。
1カット1カット露出や照明位置を変えたり、フィルターをかけたりしながらの撮影なので手間と時間がかかります。
(2020/3/26)
●全1700カット中、164カットが完成。写真(拡大できます)は、水中シーンに使う厚手の「ポリ塩化ビニール」(既述)。
火災のシーンにも使います。
湾曲の程度が違うものが数種類用意してあり、湾曲の大きいものほど映像の歪みが大きくなります。フィルム&セル時代の商業アニメでは「波ガラス」と呼ばれる
凹凸のついた複数の種類の透明ガラスを絵の上に置いて映像の歪みを表現していました。
(2020/3/25)
●全1700カット中、161カットが完成。70枚かけて背景が動くカットなどが加筆修整を経て再撮影されました。
音楽ソフトに打ち込まれた音符の量もだんだん増えてきました。(2020/3/23)
●過去作画済みの着色画のうち、多少の手直しだけで撮影できるものは殆ど撮影してしまったので、
現在は修整や加筆に時間がかかるカットの作業に入っているそうです。「座敷牢」は1カット平均30枚。多くて100枚、300枚のカットもあります。
長時間上映による観客の負担を少しでも減らそうと、当初は1時間55分までカットしたのですが、過去作画済みのカットの分量が多く、
現在の上映時間は2時間2分。最終的に2時間5分〜10分になってしまうかもしれないとのこと。でも休憩がありますのでご安心を。
「ホライズンブルー」の休憩時間は5分でしたが、各劇場の様子を見ていて「4分がちょうどよいかも」と思ったそうです。
最近は前奏曲や休憩のある映画が殆ど無く、3時間以上の映画でも休憩無しに一気に上映するようになりましたが、特にトイレの近い体質の人にとっては
休憩は重要かもしれません。なおトイレの問題とは別にアルフレッド・ヒッチコック監督「ダイヤルMを廻せ!」は1時間45分の映画ですが、
立体映画と映写機の関係で途中休憩が入ります。「休憩」に対しどう対応するかでその映画館の力量や理解度、経験値がわかります。(2020/3/22)
●全1700カット中、159カットが完成。過去に作画した絵を1枚1枚修整しながらの再撮影が続いています。同時に音楽ソフトへの音符の打ち込みが行なわれています。
いずれも膨大な量なので、毎日コツコツと作業し続けるのが大事のようです。
→右端にある絵は1992年に描かれた「座敷牢」の脚本。副題には
「極彩色肉筆流血動画」と書かれています。「"玲子"は本当は着物姿で迷路をさ迷う方が雰囲気が出るが、着物のままだとラストのアクションがしづらくなる。
また今回は自由な社会への脱出劇なので結局ラストは"1960年代の洋服"になった」そうです。立ち上がる女性教諭を描いた1959年の自主制作(独立プロ)映画「人間の壁」
の香川京子さんの服装を参考にしたそうです。
「ホライズンブルー」は最安価のコピー紙(PCC用紙)が使われ、紙の皺や波うった感じをそのまま撮影していましたが、
「座敷牢」では厚口の上質紙が使われ紙の凹凸の表現が抑えられています。
(2020/3/21)
●全1700カット中、152カットが完成。「座敷牢」はカメラ撮影がメインですが、「ホライズンブルー」や「日本の昔ばなし(原田監督担当回のみ)」はスキャナー
による取り込みが多く、その場合、1カット1カット、何枚もの特殊フィルターが絵に重ねてありました。
そのフィルター構成が、デジタル的な画質を消し、フィルムっぽく見せている秘訣だったのです(単純にフィルムノイズを重ねているだけではありません)。
2011年頃、「どうやったらフィルム調の画質になるか」を考えぬいた末「同じ色の数値が
できないようなフィルターを作れば良い」事を発見。実際に試してみたら大成功。「ホライズンブルー」は最初の頃、その特殊フィルターをかけていませんでしたが、
後から全部かけなおしたそうです。誰も考える事は同じなのか、ある商業アニメのカメラマンにそのフィルターを見た時「実はこれうちの会社でもやっていて
企業秘密になっているんです」と話していたそうです(*2013年頃の話)。ちなみにそのフィルター効果は見ている人は絶対に気づきません。
「妖怪人間ベム(2006)」の頃は、まだそのフィルターを考案する前で、映像に様々な工夫はしているのですが、
それでもデジタルっぽい質感を完全に消せなかったそうです。1980年頃、テレビでビデオ撮影のドラマが主流になった頃、ビデオ映像をフィルムっぽくみせる
機械が開発されたと新聞が報じました。原田監督が実際に確認したところ確かにフィルムのように見えたそうです。ただしその業務用の機械は高額でその後
普及しなかったらしいです。
a
b
c
d
e
f
g
h
●全1700カット中、147カットが完成。
「座敷牢」は原点ともいうべき8mmフィルム時代の作品と同じ手法で作られています。用紙はB5の上質紙(コピー紙)。着色はデザインマーカーやニッカーのポスターカラー、
色鉛筆。輪郭線はパイロットsuperプチ・中字。
普通の水性のサインペンはすぐ水に溶けてしまいますが、superプチで使用されている水性顔料は、上から水彩絵の具やポスターカラー、マーカーで塗っても にじまないのです。
鉛筆で輪郭線を描く場合は、一回旧式の乾式コピー機でコピーすると水をはじくので(しかもフィルム&セル画時代に使われていた「トレスマシン」のような味わいも出る)その上から絵の具を塗っていたそうです。
「ホライズンブルー」や「日本の昔ばなし」の手彩色画はすべてその方法がとられていました。
また「座敷牢」は殆どのカットが、背景も1枚1枚、動画に描き込まれています。これは原田監督が中学生時代8mmフィルムでアニメーションを作るきっかけになった
1914年のアニメーション映画「恐竜ガーティ(Gertie the Dinosaur)の影響によるものです。なのでよく見ると人物が動くのと一緒に 背景もわずかに動いて見えるのです。
(2020/3/18)
●全1700カット中、139カットが完成。かなり残酷な場面も完成しているのですがとてもアップロードできません。
原田監督は全編暗く陰惨な感じにしたかったそうですが、30〜40歳代に作画済みの絵が、
かなり70年代のテレビアニメっぽいので「もしかしたら思ったより重くならないかもしれない」との事。(2020/3/17)

●全1700カット中、132カットが完成。この数十年の間に作画が完了したカットを整理しながら、1枚1枚、修整・加筆してからの再撮影が連日行われています。
作画済のカットはダンボール5箱、ラフ(下描き)が完了したカットはダンボール6箱分あります。
編集ソフトに取り込む撮影済みのデータは「ホライズンブルー」から一貫して「ムービー」形式ではなく「連番」形式(静止画化した状態)で書き出されています。
これは原田監督が2001年、初めてテレビのデジタルCGアニメの仕事をした時、ベテランのCGディレクターから教えてもらった事で、連番にする理由は、
万が一事故でデータが壊れた時、ムービー形式だと全部が一瞬にして使えなくなるが、連番形式なら一部でも救出できる(フィルムと同じ理屈)からだそうです。
なお原田監督や、知人のアニメーション作家の方は皆、複数の外付けHDDにバックアップを取って様々な場所に保存しているそうです。もし事故で
家にトラックや航空機が激突したり(実際にそういう事故がありました)大地震や洪水、火事等で家が壊れた時、、バックアップを一か所にしか保存していないと、
10年〜20年かけて作った作品素材が一瞬で消え、それまでの苦労は水の泡になってしまいますが、何か所か離れた所に保存しておけば救出される確率は高くなります。
アニメーション作家の方は、外出時、作りかけのデータを必ず携帯しているそうです。留守の時、家に何が起こっても大丈夫なように。
(初見のインパクトを損なわないようにするため、完成スチルは一部を除いて拡大表示できません。ご了承の程よろしくお願いいたします)(2020/3/16)
a
b
c
d
e
f
g
●全1700カット中、122カットが完成。(写真拡大できます)
3/13は、80枚かけて水中でばらばらになる魚のカットが撮影されました。写真のように
カメラのレンズの前に透明で厚手のポリ塩化ビニールを置いて撮影すると水中の感じが出るそうです(100円ショップで売っている
もので十分)。デジタルソフトのエフェクトを使うより「味」や
「臨場感」「空気感」が出ます。カメラ撮影と並行して、毎日少しずつ音楽ソフトへの音符入力が並行して行われています。
(2020/3/13)
●3/12は、音楽(BGM)のスコアが1曲完成したので音楽ソフトで打ち込み(音符の入力)が開始されました。「座敷牢」では極力、機械による「打ち込み」は
使わない方針ですが、今回完成した曲は
テンポが速く転調も多く、演奏が難しいので、この曲のみドラムとピアノのみ打ち込みにしたそうです。
海外曲馬団の乱舞シーンの音楽で、当初このシーンはカットする予定だったのが、素材を調べてみたらほとんど作画が完了していたので、
もったいないのでやはり入れる事にしたそうです。
またこの日は棚に山積みになっていた過去作画された「座敷牢」の原画・動画・着色画・背景画の総チェックが行われました。
やっとこの25年間描いてきた素材が把握できたそうです。(写真拡大できます)一緒に、何十年も前に描かれた「少女椿」「二度と目覚めぬ子守唄」や
中学・高校生時代の8mmアニメの画稿が見つかり「少女椿」は
こちらにUPしました。
(2020/3/12)
●全1700カット中、120カットが完成。今日は東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の爆発事故から9年。ご覧になられた方は
ご存知かと思いますが「ホライズンブルー」でも2011年3月11日の光景が一瞬映ります。また「二度と目覚めぬ子守唄(1985)」のラストに出てくるのは原子力発電所と
火力発電所を融合させた架空の発電所だそうです。「二度と目覚めぬ子守唄」が制作された1980年当時、原子力発電所だけでなく、火力発電所も問題になっていたのだそうです。
本来どんな題材を描くにせよ映画や映像作品は世界中の事象や歴史と常に連関
しているのです。この数日原田監督は複数の持病が少し悪化し寝たり起きたりでしたが薬の量を少し増やし様子を見ているそうです。通院歴25年にもなると、
患者の判断による薬の増減は主治医から認められているそうです。
本日は1カット=150枚で20秒間フルで背景が動くシーンが撮影されました。また毎日少しずつBGMのスコアのパート譜(ドラムやベース、各楽器の譜面)が
書き込まれています。
(2020/3/11)
●全1700カット中、119カットが完成。本日からデジタルカメラによる再撮影が始まりました。カメラ撮影は1カット1カット丁寧に撮っていくので
1日1カット仕上がれば早い方だそうです。(以下の写真は拡大できます)。写真aはマルチプレーン対応の撮影台による撮影風景。今日は主人公・左吉の180度回り込みの
カットが撮影されました。原田監督は8mmフィルムでアニメーションを作り始めた中学生の頃から、アニメ業界で使用している「タップ(作画用紙固定器具)」
を一切使わず、一貫して「角合わせ」方式による撮影を行ってきました。これは撮影時間の短縮のためです。「二度と目覚めぬ子守唄」の時は
浮世絵など江戸時代の版画などで使用された「見当」という「紙の位置を合わせるパーツ」を自作して使っていましたが、現在は養生テープで目印(印刷で使う
トンボのようなもの)を貼るだけだそうです。
写真bは現在生産中止になって使えない過去のメディア。右からVHS-C、MiniDisc、DAT、miniDV。「座敷牢」は1992年から製作が開始されました。
当時は、フィルム、セル、セル絵の具などが相次いで生産中止の方向に流れ、しかもパソコンのスペックは現在の50分の1程度で、当時はまだ
パソコンで映画を安定して作れる時代ではありませんでした。しかも当時映画制作に使えるビデオ類は「コマ撮り(動画を1枚1枚撮影する事)」の機能が無く
(民生用ビデオは4コマ(6/24秒)のコマ撮りしかできず、自由にコマ撮りができる業務用は数百万単位という金額)
アニメーション作家にとっては苦難の時代でした。当時アニメーション作家の中にはコマ撮りできる機械を自作してビデオに取り付けたりしてフィルムカメラの代用
としていた人もいました。
写真cはこれまで撮影・録音してきた素材。現在、これらの素材をパソコンに再取り込みをしているところです。
製作費を少しでも下げるため「少女椿」も「座敷牢」も当時原田監督が勤務していたアニメ制作会社の奥の物置に
埃をかぶって使われてないタイムシートやレイアウト用紙が利用されました。
写真dは1970年代の「タツノコプロ」のタイムシートです。
(2020/3/10)
a
b
c
d
●全1700カット中、117カットが完成。連日 過去数十年間に作画が完了していたカットの再撮影・再編集が続けられています。
作画済みの絵は膨大な量にのぼります。並行して効果音や音楽の作業も行われています。
(2020/3/9)

●右は明日から使う撮影台の写真(拡大できます)。大きな三脚のような金属は、三起社製のフィックス(固定撮影)専用の撮影台。
ハンドルがついていて分割移動ができるようになっています。台の底は取り外しができるようになっていて、
底に透過光(光を使った特殊撮影)用の白熱ランプを置けるようになっています。
その上にマルチプレーン撮影用のガラステーブルが置いてあります。
ガラステーブルは一般家具ですが、中段の2つのガラス面が自由に動かせるようになっています。右の2枚の写真は「ホライズンブルー」終盤、春子の回り込みシーンの撮影風景です。
(2020/3/7)
●全1700カット中、73カットが完成。これまでは、着色原稿は見当たらなかったものの、奇跡的に見つかった(2000年頃使っていた外付けHDDは2台あり、うち1台は
壊れて作動せず、もう一台のファイルが無事だった)何十年も前に古いパソコンでデータ化したファイルを、
画像サイズや縦横比、拡張子などを修正して編集ソフトのタイムラインに組み込む作業が行われていました。今日でその作業は完了したので、明日からは現存する着色原稿を新たに
「デジタルカメラで撮影→撮影ソフトに取り込み
→編集ソフトに取り込み」、または「過去スキャン済のデータを撮影ソフトで再撮影」あるいは「過去、VHSやβcam、DVDRなどに記録した映像を修正して再編集」の作業に移ります。
これら膨大な過去素材はすべてバラバラの状態で保存されており、それが全1700カットのどのカットに当たるのか
絵コンテと照らし合わせながらの撮影作業になります。カメラ撮影は1カット1カット照明や露出、フィルター効果を変えて撮るため、今までのような早いペースでは
完成数は増えないとの事です。さらに確定申告もあるのでペースはさらに落ちるかも、との事です。
今回も「ホライズンブルー」のように実写によるドキュメンタリーシーンが入りますが、こちらの編集はかなり大変なので
「ホライズンブルー」同様、一番最後の作業になるそうです。
(2020/3/7)
●全1700カット中、53カットが完成。今まで「ホライズンブルー」で使っていた手製の撮影フィルターや、BANK(使いまわし素材)が、全部「ゴールデンセクションサイズ」
だったので、今日は「座敷牢」用の縦横比に作り直す作業などが行なわれました。
撮影ソフト「レタス」(32bit)はWindows10の最新機(64bit)ではたびたびフリーズするので、1日に何回も強制終了したり、
古いWindowsXP機で作業したりが続いています。(2020/3/5)
●全1700カット中、48カットが完成。1カット45秒フルアニメーションで動くカットなどが編集ソフトのタイムラインに乗りました。
1カット300枚、400枚など結構あるそうです。原田氏曰く「今作画したらホライズンブルーのように
重い感じになると思うが、作画済のカットは30歳代〜40歳代に描いたもので、重く過激な脚本に対し70年代のAプロ(当時の東京ムービー系の作画会社)のような
快活な動きになっている」そうです。
昔知人から貰ったフランス製の鍋で原田氏が酒粕を煮込んでいたら「ごごごご」という大きな音がして即録音。巨大からくりの駆動音に使えそうとのこと。
(2020/3/4)
●全1700カット中、44カットが完成。今日は全140枚・20秒間動き続けるカットを仕上げたそうです。「少女椿」「ホライズンブルー」は静止画が多かったですが「座敷牢」
は かなり枚数をかけて動かしているようです。池に物を落とすシーンで「ホライズンブルー」で録音した「子どもを浴槽に落とす」水音を兼用しようとしたら、雰囲気が合わず、
結局浴槽で録り直したとか。浴槽で録るといかにも浴槽ぽい反響音がするので、あとでグラフィック・イコライザーで音を修正する作業が必要になります。
効果音作業は後に残すと膨大な量にめげてしまうので、その場その場で付けていくのがコツだそうです。秒数の長いカットは、先述のように
Windows10で撮影ソフト「レタス」がフリーズするので、WindowsXPを立ち上げての作業になっています。
(2020/3/3)
●3/1の投稿で「効果音の録音にICレコーダーを使っている」と書いてしまいましたが、ICレコーダーを使っていたのは2000年頃で、現在は「リニアPCMレコーダー」(写真)
を使用している
そうです。すみません、本文も差し替えさせていただきました。「リニアPCMレコーダー」は音がデジタルっぽくクリアになりすぎなので、1回1回音を古風な感じに劣化させる
作業が必要との事です。(2020/3/3)
●全1700カット中、38カットが完成。本日は林(写真・拡大できます)の中で効果音の素材録りが行われました。
土の上で足音や、いじめのシーンで使う「ぎしぎし」という音などを録音。昔はDATやミニディスク、ICレコーダーなどが使われましたが
現在は「リニアPCMレコーダー」が使用されています。現在ならばスマートフォンでも十分かもしれません。素材を録音したあと
ファイル分けし、イコライザーで音質が加工されます。
「ホライズンブルー」は1990年とはいえほぼ現代の都会の話なので、効果音は家の中や街などですぐに録音する事ができ、
現代劇用の効果音の素材は、街の音や交通音など、何十年もかけてすでに5000近くのライブラリーができています(写真・拡大できます)。
しかし「座敷牢」は1960年代の田舎が舞台。
聴こえる音もかなり違い、ほとんど一から作らなければなりません。
本日は廊下を歩く時の「ぎぎぎ」というきしみの音や殴る音の録音も行われました。ちなみに「ホライズンブルー」第二部で戦時中の日本兵が森の中を歩く足音も
この林で録音されました。
(2020/3/1)
●全1700カット中、31カットが完成。現在は過去に作画を終えたカットを、トリミングやフォーマット変換して最新のパソコンと編集ソフトに取り込み直しているだけなので
ペースがやや早いですが、作画の新作作業に入ると
ペースが落ちるそうです。Windows10での撮影ソフト「レタス」の不具合(8分以上の長いカットや300枚以上の動画になるとフリーズする)は「レタス」は32bit用のソフトなのに
Windows10(64bit)で動かしているのが原因だったようです。WindowsXPで試したら問題なく動いたので、今後は
Windows10とWindowsXP両方で作業する必要があるとのことです。(2020/2/29)
●「再撮影」と、再撮影が終わったカットの編集作業が続いています。編集ソフト・プレミアの不具合(連番(静止画に分解された状態の映像)が正しくタイムラインに読み込めない)は
「プロジェクト設定」という一番最初に行なう基本設定が違っていたのが
原因の一つと判り(「AVCHD HD1080p30」が「AVCHD1080p60」になっていた)1ロールだけ
新しい設定にして最初から編集をやり直ししたそうです。
それでも現在までに全1700カット中、25カットが完成しました。
内容的にインターネットで公開できる絵が少ないです。近年は映画をインターネットやスマートフォンで見る時代になってしまいましたが、霧生館の作品は
インターネット公開用に作られていません。あくまで小劇場の暗闇で映写する事を念頭に撮影・技術設計されています。そして劇場で観客の皆様からいただいた
入場料金が作家の生活費や映画の製作費、上映経費に充てられます。
なおインターネット公開用のスチルは画像サイズを極小にし、念には念を入れて一部にモザイクを入れています。
(2020/2/28)
●すでに作画が完了しているカットの「再撮影」が始まりました。撮影ソフトはレタススタジオ(コアレタス。WindowsXPの時代のソフトウエア)が使用されていますが、
Windows10に替えてから、書き出し時にたびたびフリーズするそうです。
レタスの前は「アニメスタジオ」というソフトを使っていて、
やはり1カット300枚の書き出し時に毎回フリーズしたのでレタスに替えたそうです。
絵コンテは「自分だけが分かればよい」ので、かなりラフになっています。
作画済みのカットがあるとはいえ、全2000カット。1日1カットずつ仕上げても6年はかかります。
子どもが小学校に入って卒業するぐらいまでの制作期間がまずは必要です。
(2020/2/25)
●本編に使用される音楽全11曲のメロディとコード(和音記号)が17枚の譜面に記録完了。また本編の映像の画質の「粗さ」(スキャン・解像度・書き出しサイズなどの数値)が
決定されました。「ホライズンブルー」は十数年前の WindowsXPとプレミアエレメンツ・バージョン2で作られ、まだHDなどの高画質で書き出しできない時代でした。
720×480に上下黒マスクで切った720×427というかなり小さい映像だったので、ある意味、映像全体が汗をかいたような粗い画像になっていました。
「ホライズンブルー」完成後 WindowsXPのパソコンは壊れ、昨年 Windows10・プレミアエレメンツ2019を購入。書き出しサイズの選択肢は増えましたが「1960年代の田舎が舞台なのに高画質・クリアな映像はおかしい」と、
意図的な粗さの数値を決定。B5のコピー紙に作画した絵を798×580pixelというサイズに変換して編集ソフトに取り込みます。
これは HDサイズの約半分の解像度ですが「ホライズンブルー」よりはやや鮮明です。近年古い映画が次々クリアにリマスターされるなか、基準にしているのは
60〜70年代の邦画(写真)の古い質感だそうです。クライマックスはワイドスクリーンになり「地下幻燈劇画少女椿・赤猫座興行」のように3面マルチ上映になるそうです。(2020/2/24)
●「座敷牢」全体の台詞編集が一段落し、音楽を入れる場所と分量がわかったので、現在はBGMのラフ・スケッチが進められています。今回も「ホライズンブルー」のように
全体の半分の音楽は外部の複数ミュージシャンに依頼しすでに何年も前に完成しています。
原田監督は加齢や持病による体の衰えを感じ「生きているうちに多くの自主制作作品を完成させたい。
描きたい題材が山ほどあるので、もうテレビアニメの仕事には戻らない」との事。
1〜3月までは電話を鳴らないようにして、病院の定期診察の日を除き連日アトリエに籠っていますが、1日最低5000歩は歩くようにしているそうです。
(2020/2/22)
●右の画像はフォトショップで作られた清書用の五線紙(A4サイズ・座敷牢用)。ト音記号と小節線があらかじめ印刷されています。老眼鏡無しでも見られるように、
前回より五線の幅を少し大きくし、音符が見やすいようにあらかじめ薄い線で印刷してあります。
最下段のドラム・パーカッション・ベース部分は五線と五線の間が狭しA4用紙内に無駄なく収まるようにしてあります。
左側が小編成用、右が大編成用。以前はカセットテープ式のMTR(ティアック144)を使ってピンポン(多重)録音していましたが、現在では
ミュージック・クリエイターというソフトを使っているそうです。ただしドラムパート以外は打ち込みではなく、実際に楽器を演奏したものをマイクやケーブルをパソコンに繋げてソフト上で
多重録音しているそうです。
以下原田監督がすでに親しい人に公開済みの写真から幾つか紹介します。c は録音風景。ギター、バイオリン、KORGのシンセ(37年間故障なし)、モーグのテルミン、民族楽器など一通りの楽器が揃っています。
テルミンのACアダプターが見つからず、楽器店を通して米モーグ社に連絡したら、購入してから20年ぐらい経つのにちゃんとACアダプターを送ってくれて感動したとか。
尺八の代わりにリコーダーを使ったり、風鈴やおもちゃの楽器も使われています。
d は小型のドラムセット。
e は「二度と目覚めぬ子守唄」などで活躍した「MTR・ティアック144」が1980年代後半に故障、修理不能になり、その後使っていたカセットテープ式MTR。もう使わないので
数年前に処分したそうです。f もやはり使わなくなり処分した撮影用具(露出計や色照明用のパラフィンなど。一部はレトロ商会に寄付)。
g は2004年東京ファンタスティック映画祭「地下幻燈劇画少女椿」オペエリア。会場で映像に合わせてミニディスク音源を出力したりキーボードを生演奏していたのです。
c
d
e
f
g
h
i
j
k
l
m
n
o
●台詞の粗編集が半分まで終わったそうです。現在15ロール=1時間半になっており、最終形が「3時間」になった場合、最低でも1時間カットしなければならないとのこと。
当初「休憩無しの1時間半作品」をめざしていたのですが難しそうで、再び「休憩付きの2時間作品」になるかもしれないとのこと。
作業は休みなく連日続けられています。今後の流れとしては台詞の粗編集→台詞の詳細編集(3時間を2時間に縮める)→作画済みの部分を
デジタルカメラで再撮影、同時に音楽制作。これらが終わって初めて新作部分の作画作業・撮影作業となります。右の画像は書きかけの音楽のスケッチだそうです。
そうなったらどこかのシーンをカットしなければならないそうです。
ちなみに「ホライズンブルー」は4時間の台詞を大幅にカットしてやっと2時間にまとめられました。(2020/2/10)
原田監督は加齢で年々視力が落ちているので、 線の幅が年々広くなっています。写真右は「二度と目覚めぬ子守唄」
(1985)に使用されたBGMのスコア(1981年)です。>※写真クリックで拡大できます(2020/2/8)
「ホライズンブルー」はゴールデン・セクション サイズ「1:1.618」
(中平康監督が
1976年の映画「変奏曲」で使用。「東宝ビスタ」にやや近い縦横比)で制作されましたが、
「座敷牢」では「1:1.4」という、スタンダード(4:3)と黄金比の中間ぐらいの
オリジナル・スクリーン比で制作される事になりました(途中で秘密の仕掛けがあります)。(2020/2/6)
年月も経っているので一から音声トラックを組み直し、作画済の動画を再撮影したのち、新作部分の作画に入り、
並行して音楽制作を行なうそうです。かなり過激で衝撃的な内容になっています。
(2020/2/3)
●座敷牢の制作は連日休みなく急ピッチで進められています。すでにダンボール3箱分くらいの作画が完了、最終的には10箱分ぐらいの分量になるそうです。
壮絶な子ども社会の虐めや差別、弱者攻撃や村八分、暴力・残酷・性描写・過激な台詞満載ですが、根底には社会の様々な不条理への激しい怒りが溢れています。
「座敷牢」の絵はSNSで公開できないものばかりなので、このページで時々経過をお伝えする予定です。(2020/2/1)
●「座敷牢」の主人公の少年のキャラクター・デザインの元になったのは、1957年のドキュメンタリー映画「世界は恐怖する 死の灰の正体」
(製作:日本ドキュメントフィルム/監督:亀井文夫、ナレーション:徳川夢声)に出てくる広島で被爆した乳児の写真です。
そのシーンには「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という原爆死没者慰霊碑の言葉が添えられています。
この映画や写真の出典については亀井文夫著「たたかう映画-ドキュメンタリストの昭和史-」(岩波新書)などをご参照ください。(2020/1/17)※写真クリックで拡大できます→